2018年12月に EOS Kiss M(ダブルレンズキット)[以下 Kiss M]を購入したので、そのレビューです。
- ハイエンドコンパクトデジカメ(例えばSONYのDSC-RX100など)と比べて、何が違うのか?
- 今キヤノンの一眼デジカメを買うとしたら、どれを選べばよいのか? EOS Kiss X9? EOS Kiss X9i? EOS Kiss M ?
- EOS Kiss Mを購入するとしたら、どのレンズキットを購入すればよいのか?
といった観点で記載しています。
EOS Kiss M まとめ
最初にまとめですが、EOS Kiss M は以下の点でハイエンドコンパクトデジカメ(SONY DSC-RX100など)や写真の綺麗なスマートフォン(HUAWEI Mate 10 Proなど)と比較して優れていると思います。
- より望遠側の撮影ができる(レンズによる)。
- 背景を効果的にぼかすことができる(レンズによる)。
- 動くもの(例えば子ども、列車)に強い。
- ファインダーでの撮影ができる。撮影に集中でき、写真を撮っている気になる。
- 高感度でもノイズは少なく画質もよい。
- レンズを変えることにより、様々なシーンに対応できる。広角から望遠まで、明るい単焦点レンズ、マクロレンズなど、いろいろ選べる。
以下の点で、劣っています。これが許容できれば、EOS Kiss Mを検討する価値があると思います。
- いくら小型軽量と言っても、DSC-RX100やスマートフォンと比較すれば嵩張る。
EOS 60DとEOS Kiss M
今回は中級機のEOS 60D(2011年購入)に加えて、エントリー機である EOS Kiss M(2018年購入) の買い増しをしましたが、7年間の進化は非常に大きなものがありました。EOS Kiss Mのよさを挙げてみます。
- とても小型で、軽量。
- ライブビューでのAFがデュアルピクセルCMOS AF搭載によりとても高速。これによってバリアングル液晶が活かせるようになった。EOS 60DはコントラストAFで遅くライブビューはほとんど使えなかった。
- AFがとても使いやすい。液晶パネルを用いたライブビュー撮影時のタッチAF、タッチシャッター。ファインダー(EVF)撮影時のタッチ&ドラッグAF。特にタッチ&ドラッグAFはとても便利。
- 143点(レンズによっては99点)の測距点が使えるようになった。EOS 60Dは9点だった。
- ファインダー(EVF)に2軸電子水準器が表示される、撮影写真の表示ができるなど、ファインダー(EVF)の表示内容が格段に向上した。
- 高感度での画質が向上した。ISO6400〜ISO12800までは常用できそう。EOS 60DではISO3200までだった。
- 小型軽量なEF-Mレンズが使える。
もちろんよいところばかりではなく、EOS Kissであるためサブ電子ダイヤルが無くなることによる操作性の低下は生じてしまいます。特にEOS Kiss MにはEOS Kiss X9に搭載されている露出補正ボタンがありません。代わりに十字キーの上ボタンに、電子ダイヤルの割り当てを露出と絞り値やシャッター速度との間でトグル切り替えをするボタンが割り当てられています。ファインダー撮影時にはこれが使いづらいのが問題でした。これについてはカスタム機能である程度改善できますので、のちに記載します。
2011年のEOS Kiss Digital XからEOS 60Dへの買い換えは、欲しい機能が60Dに搭載され、同時期のEOS Kiss X5にはその機能が無かったため、大きく重くなってもEOS 60Dの購入を決めました。今回のキヤノンのミラーレスカメラの買い増しに当たっては、価格の面から残念ながらEOS Rは対象にできませんでした。最初はEOS M5を検討しましたが2016年11月の発売と若干時間が経っていることが気になりました。なら2017年4月発売のEOS M6かと調べてみると、外付けファインダーを追加してもEOS M5で搭載したタッチ&ドラッグAFができないことが分かり対象から外れました。
そこで検討に加えたのがEOS Kiss Mでした。Kissということで当初は考えていませんでしたが、店頭で触ったり仕様の確認をしてみると、Kissだからと対象外には出来ないカメラであることが分かりました。EOS Kissであるため電子ダイヤルが1個という制約はありますが、DIGIC 8が搭載されることによりデジタルカメラとしてはEOS M5よりも新しい世代となっていて、EOS M5にも肉薄する、一部は超える性能・機能を持っていました。それでいてEOS M5よりも安い。
操作性の制約、デジタルカメラとしての性能向上、そして価格を検討し、EOS Kiss Mの購入を決めました。
なお、文中には EOS Kiss M で撮影した写真を載せました。カーソルを当てると使用レンズが表示されます。クリックするとFlickrで閲覧可能です。
EOS Kiss Mの特徴
以下に、EOS Kiss Mのよいところをはじめとした特徴を記載します。とても大きな利点であると考えている点が2つあります。
小型・軽量
Kiss Mは本体が390g、一番ポピュラーなレンズであろうEF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMは130gで、計520gとなります。これに対して小型の一眼レフデジカメであるEOS Kiss X9では本体が456g、EF-S18-55mm F4-5.6 IS STMは215gで、計671gとなります。またEOS 60Dは本体のみで755gです。
EOS 60DとEOS Kiss Mを並べた写真を載せましたが、EOS Kiss Mの小ささが際立ちます。
大きなレンズで本格的な撮影に臨むのであればグリップのしっかりしたある程度の大きさをもったカメラが必要と思いますが、気軽に撮影をしたい、荷物を減らしたい、というときには EOS Kiss M は最適だと思います。
この小型・軽量である点が、EOS Kiss Mの大きな2つの利点の内の1つ目です。
ライブビューでの高速なAF、タッチAF、タッチシャッター、タッチ&ドラッグAF
ライブビューでのAFは高速でとても使いやすいです。これはEOS 70Dから採用されたデュアルピクセルCMOS AFの恩恵です。精度に関しても問題無く、AFで合わせたあとに10倍に拡大して表示してみましたが、きちっと合っていました。信頼してAFを使うことができると思います。
私は主に顔+追尾優先AFか1点AFを使っていますが、いずれにしても気持ちよい速さと精度でAFが合いますので、とても使いよいです(ただし条件が悪いとデュアルCMOS AFといえどもAFは迷います)。
それに加えてさらに使い勝手をよくしているのが、液晶パネルを用いたライブビュー撮影でのタッチAF、タッチシャターと、ファインダー(EVF)を用いた撮影でのタッチ&ドラックAFです。
タッチAFは液晶パネルをタッチしたところにフォーカスが合う機能。そしてタッチシャッターはタッチしたところにフォーカスを合わせてそのままシャッターを切る機能です。スマートフォンでは当然の機能と思いますが、これをデジタル一眼カメラで快適にできるというのはかなり便利です。特に小型軽量、かつバリアングル液晶を備えたEOS Kiss Mでは、右手でカメラを持ち液晶パネルでフレームを決めて、左手でピントを合わせる場所を決めてタッチシャッター、という使い方ができます。上の写真はそのようなライブビューで撮ったものです。
さらに便利なのがタッチ&ドラッグAFです。これはファインダー(EVF)を用いた撮影で、液晶パネルをパソコンのタッチパッドのように用いてAF枠をマウスカーソルのように移動させることができます。これがカスタマイズをすると自由にAF枠を移動できるようになってとても使いやすい。EOS 60Dの9点AFと比較すると非常に大きな違いです。カスタマイズについては後ろにまとめて記載します。
なおタッチ&ドラッグAFをする場合は液晶パネルを顔で覆ってしまうと使いづらくなります。私はいつも右目でファインダーを覗いていて液晶パネルの右側が空いていますので、そちらでタッチ&ドラッグAFを使っています。
加えてEOS Kiss Mでは、顔+追尾優先AFのとき、少なくとも99点、レンズによっては143点の測距点を使うことができます。EOS Kiss X9iの位相差AFは測距点45、EOS M5のデュアルピクセルCMOS AFは顔+追尾優先AFのとき測距点49ですので、EOS Kiss Mが高性能であることが分かります。
このAFの便利さが、EOS Kiss Mの2点の利点の内の2つ目です。
便利なファインダー(EVF)
EOS Kiss Mの電子ビューファインダーは高精細な有機ELパネルで、ライブビューでの液晶パネルと同様の情報、撮影モード、2軸の電子水準器、ヒストグラムなどを表示することができます(なおなぜそういう仕様になっているのか分かりませんが、顔+追尾優先AFでは電子水準器は表示されません)。これがとても便利です。
EOS 60Dのファインダー内電子水準器は1軸で、かつ露出表示と兼用のためシャッター半押しで消えてしまうし、縦位置では表示されず、あってありがたいのですが不便でした。EOS Kiss Mの2軸電子水準器はファインダー画像にオーバーレイ表示され、もちろん横位置でも縦位置でも表示され、とても便利です。
そして、露出やホワイトバランスも反映されます。撮影後に液晶パネルで確認する必要がなくなります。
加えて、撮影した写真をファインダーで確認することができます。有機ELパネルなのでできて当然ですが、EOS 60Dを使っていた身にはファインダーで撮影した写真が確認できるというのはかなり新鮮でした。
高感度、ISO12800までは使えそう
EOS Kiss Mは通常はISO25600まで、設定すればISO51200まで対応可能です。感覚的にはISO6400は使えて、ISO12800は何とか使えるかな、というレベルだと思います。ISO25600はどうしてもそう設定しないと撮れないとき。拡張設定であるISO51200は非常用ですが写せるという意味は大きいです。ISOオート時の最高ISO感度は設定可能ですので、使えると思うISO感度を設定することができます。
EOS 60Dでは、感覚的には何とか使えるのは3200までと感じていましたので、2段分はISO感度に対する画質が向上しているとの印象です。左上から順に、ISO=51200からISO=100まで1段ずつ下げています。高感度ノイズ低減設定は弱、撮ったままのJPEGです。
小型軽量なEF-Mレンズが使える
EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMは220g、EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM 130g、EF-M 22mm F2 STM 105g(上の写真)、EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM 260gと軽量なレンズがあります。これを一眼レフデジカメ用であるEF-Sで似たレンズを準備するとすれば、EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM 240g、EF-S 18-55mm F4-5.6 IS STM 215g、EF-S 24mm F2.8 STM 125g、EF-S 55-250mm F4-5.6 IS STM 375gと、軽いもののEF-Mレンズにはかないません。かつEF-Mレンズは今のところ全て60.9mm径で統一されていて基本的に細身です。
これら小型・軽量、コンパクトなEF-Mレンズが使えるというのは、EOS Kiss Mのメリットです。
より望遠側の撮影ができる
これはレンズによりますが、例えばダブルズームキットのEF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMとEF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STMを組み合わせれば35mmフィルム換算で24mmの広角から320mmの望遠まで撮影できます。これに対してDSC RX-100(I)は35mm換算28-100mm、最新のDSC RX-100VIでも24-200mm。スマートフォンのMate 10 Proは単焦点で27mm相当、またiPhone XSでは26mm相当と52mm相当の切り替えです。
望遠が必要なときは、どうしてもそれなりのレンズが必要になります。これに対応できるのはEOS Kiss Mのメリットであると思います。
背景を効果的にぼかすことができる
レンズの焦点距離が長いほど、また絞り値が小さいほど、ボケを作りやすくなります。
HUAWEI Mate 10 Proの焦点距離は35mmフィルム換算で27mmと書きましたが、実際の焦点距離は3.95mmです。これの意味しているところは、Mate 10 Proの撮像素子の大きさの場合、焦点距離が3.95mmのレンズで、35mmフィルムと焦点距離27mmのレンズの組み合わせと同じ範囲を写せます、ということです。しかし実際の焦点距離は3.95mmなので、ボケを作りづらい。
EOS Kiss Mの場合、EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMの最広角側に近い、焦点距離17mmで35mmフィルム換算およそ27mmとなります。実際の焦点距離はMate 10 Pro 3.95mmに対してKiss Mは17mmなので、Kiss Mの方がボケやすくなる訳です。
また、ダブルズームキットの望遠側レンズEF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STM であれば焦点距離200mmまで使えますので、よりボケを作りやすくなります。
掲載した写真は焦点距離135mm、絞りはF=2.0です。背後の丸い光は電球で、この程度にぼかすことができます。
しかし最近のスマートフォンのカメラはよくできていて、複数のレンズやAIを使ってボケを再現することができるようになっています。例えばHUAWEI Mate 10 Proには、ワイドアパチャーという機能があり、一眼カメラのF=0.95のボケを再現することができます。正直なところかなりよく出来ているのですが、それでも現時点では計算ではなく光学的にボケを作り出しているデジタル一眼カメラの方が勝っているかな、と思います。
マウントアダプタ経由で、豊富なEF, EF-Sレンズが使える
EF-Mはレンズの本数が少ないと言われますが、EOS Kiss MはマウントアダプタEF-EOS Mを使うことで、豊富なEFレンズおよびEF-Sレンズを使うことができます。マウントアダプタが挟まるためEOS Kiss Mの手軽さには合わないと思いますが、それでも使えることには大きな意味があると思います。私はデュアルピクセルCMOS AF搭載機はEOS Kiss Mが初めてでしたが、EF-EOS Mを経由しても精度の高いAFは維持されていました。例えばEF 135mm F2L USMのような明るい単焦点レンズを精度の高いAFを持つEOS Kiss Mで使うというのは、なかなかに面白そうです。
ただしマウントアダプタを使うとEOS Kiss Mの小型・軽量であるという特徴を損ねてしまい、また手軽に使うこともできなくなってしまいますので、必要最低限の EF-M レンズは持っておきたいところです。
なお残念ながら、EF 50mm F1.8 IIはAFが安定しませんでした。使用したことは無いですが EF 50mm F1.8 STM であれば問題無いと考えます。
動くものに強い
サーボAFを使うことにより、高速・高精度なデュアルピクセルCMOS AFによって動く被写体にフォーカスを合わせ続け、かつ7.4枚/秒もの連続撮影をすることができます。かつての中級機EOS 60Dでも5.3枚/秒、最新のEOS Kiss X9iでも6枚/秒ですので、性能の高さが分かります。ただしJPEGでの撮影時連続撮影枚数は33枚と限られていますので、注意が必要です。
このような移動する被写体への対応、例えば子ども運動会の撮影などでは、望遠が使えるという点も合わせてまだデジタル一眼カメラの方が勝っていると思います。
再度のまとめ
以上が、ハイエンドコンパクトデジカメである DSC-RX100 やスマートフォンと、一眼ミラーレスデジカメ EOS Kiss M を比較しながらその特徴を検討した結果です。レンズの性能差と撮像素子の大きさの違いによる画質、特に望遠が使えること、高感度時の画質は一眼ミラーレスカメラの方が優れています。
また、2011 年の中級機である EOS 60D からもデジカメとしての機能は大きく向上し、かなりの高性能機であることが分かりました。いきなり 6D クラスのようなフルサイズ機を購入するのもいいですが、EOS Kiss M も すばらしい性能を持っているのでそれで様子を見て、写真を本格的に趣味としたくなったら EOS M5の後継機や、(レンズは継承できませんが)EOS 80D のような中級機、EOS 6D もしくは EOS R のような中級以上のフルサイズ機に移行するというのがよいと思います。EOS Kiss Mは高性能ですが、カメラとしての使い勝手の面では中級以上のカメラは入門機とは違いがあるためです。ただ私の体験から言うと、レンズばっかり買ってデジタルカメラ本体にかけるお金が残らず、Kiss Digital X 購入後4年以上経過し、ようやく 60D を購入できました。
どのカメラを購入するのか
一眼カメラを購入しようとし、メーカーをキヤノンに決めたとすると、カメラの候補としては、
のKiss 3機種がまずは挙げられると思います。Kiss Mは一眼のミラーレスカメラ。Kiss X9iとKiss X9は一眼レフと呼ばれるカメラです。では、どの機種を購入すればよいのでしょうか?
選択に迷うようであれば EOS Kiss Mでよいと思います。これらの3機種の中では最新であり、最も小型・軽量、性能も十分です。
一眼のデジカメを購入したいが価格は抑えたいということであれば、EOS Kiss X9です。最も安価であり、しかし性能は高いです。
一眼デジカメとしての性能を追求したい、今後もステップアップをしていくかも、ということであれば、EOS Kiss X9iです。十分に慣れてきたところで、そのまま一眼レフの Kiss 系統で続けるのか、EOS 80D系統にステップアップするのか、はたまた EOS 6D、EOS R 系統のフルサイズ機にステップアップするのか、ということも考えられます。
EOS Kiss Mを候補にした場合は、まずはダブルズームキットをご検討ください。対応する焦点域は15-200mmとなり、広角から望遠まで、2本のレンズで対応できます。まずはこのレンズで、いろいろ試してみることをおすすめします。
望遠はいらないのだけど、ということであれば、ダブルレンズキットをご検討ください。これは15-45mmのズームレンズと、22mmの単焦点レンズの組み合わせとなります。ここでカギとなるのは22mm F2の明るい単焦点レンズで、このような明るい単焦点レンズで写りの良さやボケ具合を味わうというのは一眼デジカメの醍醐味の1つです。
私は、ダブルレンズキット(15-45mmと22mmのセット)を購入しました。ただしすぐに、ダブルズームキットに含まれる望遠側レンズである55-200mmを(中古で)買い増しました。こういう経緯を踏まえて考えますと、まずは15-45mmと55-200mmのダブルズームキットを購入し、次にEF-M 22mm F2 STMの購入を検討するのがよいと思います。
なお、EF-MレンズはEOS M, EOS Kiss Mシリーズ以外では使用できませんのでその点はご注意ください。EOS M5系列へのステップアップであれば問題ありません。EOS 80D系列へステップアップを考えているのであればレンズが完全に共通のEOS Kiss X9もしくはEOS Kiss X9iが適しています。ならばEOS Kiss X9/X9iの方がよいかというとそうとも言えず、ステップアップ先がEOS 6DであればEF-Sレンズは使えませんし、EOS Rであればマウントアダプタ経由でEF-Sレンズは使えますがあまり積極的に使うとは考えづらいです。従ってEOS Kiss Mを購入する段階ではステップアップ先まで考慮する必要は無く、まずはEOS Kiss Mを購入して使ってみる方がよいと思います。
どのレンズキットを購入するのか
ここでは再度、ミラーレスデジカメである EOS Kiss M を購入する場合にどのレンズキットを購入するのか、という点を考えます。一眼レフデジカメである EOS Kiss X9i や EOS Kiss X9 を購入した場合の検討については、一眼レフデジカメレンズ購入のページをご参照ください。
EOS Kiss M を EOS Kiss X9 などと記載を別にしたのは、レンズのラインナップが異なるからです。EOS Kiss M の場合は、ベースは EF-M というレンズとなります。加えてマウントアダプタという中継器を使って一眼レフデジカメ用のEFやEF-Sというレンズを使えるようになります。
最初に、私が持っている EF-M レンズは EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM、EF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STM、EF-M 22mm F2 STM、EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMの4本になります。それ以外のレンズに対する検討はレンズの仕様、および保有しているEF-S, EFレンズからの類推となります。
お薦めのレンズキットは、次の種類からいずれか1組です。EOS Kiss M の新規購入をモデルケースとして考えます。
- 1.EOS Kiss M ダブルズームキット (本体とEF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMとEF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STMの組み合わせ)
- 2.EOS Kiss M ダブルレンズキット (本体とEF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMとEF-M 22mm F2 STM の組み合わせ)
- 3.EOS Kiss M EF-M 18-150 IS STMレンズキット (本体とEF-M 18-150mm F3.5-6.3 IS STM の組み合わせ)
- 4.EOS Kiss M 本体とTAMRON 18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC (Model B011)の組み合わせ
1はレンズ2本の合わせ技で、15から200mmの光学13.3倍ズームとなります。片方で15から45mmの3倍ズーム、もう片方で55から200mmの(15mmを基準にすれば)3.6倍〜13.3倍を担当します。手ぶれ補正つきです。キヤノン製という安心感があるとともに、ダブルズームキットで買うと価格の面でお得です。108,090円です。
2は1本が標準域のズームレンズ15-45mmの光学3倍ズーム。もう1本が22mm F2の明るい単焦点レンズという、一眼ミラーレスカメラを楽しめる組み合わせです。102,130円です。
3はこれ1本で18から150mmの光学8倍ズーム。手ぶれ補正つきです。こちらもキヤノン製という安心感があります。122,480円です。
4はこれ1本で18から200mmの光学11倍ズーム。手ぶれ補正つきです。キヤノン製ではありません。本体と合わせますと137,750円です。
EOS Kiss X9iのような一眼レフカメラ用であれば3や4のような高倍率ズームレンズと呼ばれる1本でズーム倍率の高いレンズもお薦めするのですが、このような高倍率ズームレンズは若干重く嵩張るため Kiss M の小型・軽量さを活かせないことと、Kiss M 向けとしては価格の面でもメリットが無いことから、Kiss M の場合には積極的にはお薦めできません。
ここに挙げていないEF-M 15-45 IS STMレンズキットもありますが、このレンズ1本では15-45mm(35mmフィルム換算で24-72mm相当)の光学3倍ズームで物足りないと思います。このページに記載している例は EF 15-45mm IS STM が多いですが、望遠側のレンズはあった方がよいと思いますので、15-45mm 単体では積極的にはお薦めしません。
これらの面から、オーソドックスにEOS Kiss Mダブルズームキットをお薦めします。まずは15-45mmと55-200mmの2本のレンズで広角から望遠までを試してみて、よく使用する焦点距離を知ったり、何か不満が出てきたとすればどの辺りが不満なのかを感じていくのがよいと思います。不満がでてきたら、またこのページを見てみてください。
私は2のダブルレンズキットを購入しましたが、すぐにEF-M 55-200mmを買い増しました。EF-M 22mm F2 STMに興味があるとしても、まずはダブルズームキットを購入して、やっぱり欲しいということであればEF-M 22mm F2 STMを購入した方が、価格の面でもよいと思います。
標準ズームレンズ
ここには、標準ズームレンズEF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMの撮影例を載せておきます。130gの小型軽量さが大きな魅力です。周辺光量低下などがあるので、絞れるのであればF8くらいまでは絞って使うのがよさそうです。
望遠ズームレンズ
ここには、望遠ズームレンズEF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STMの撮影例を載せておきます。F4.5-6.3と暗いですが小型軽量であるという魅力が勝ります。
次にに買いたいレンズ
EOS Kiss Mをダブルズームキットで購入すると、まず一通りは広角から望遠まで必要な焦点距離が揃います。しかしEOS Kiss Mはレンズ交換式の一眼デジカメですので、ダブルズームキットの2本以外のレンズも試したいところ。ではどのレンズを試すのがおもしろそうでしょうか?
明るい単焦点レンズ
一眼カメラには、「単焦点レンズ」と呼ばれるレンズがあります。これは 22mm や 32mm のように、焦点距離が決まっているレンズです。
今はコンパクトデジカメでも3倍や10倍ズームが当然で、それから考えると極めて不便なレンズです。ではなぜこのレンズをお薦めするかと言うと、次のような魅力があるからです。
- 明るい。F1.4, F2 などの開放F値を持ちます。明るいレンズはボケの効果を得やすくなります。またシャッタースピードを速くできるため、手ぶれが起きづらいという利点があります。
- 軽い。明るさの割に軽いです。例えば EF-M 22mm F2 STM は 105g です。軽いというのはレンズの重要な性能のうちの1つだと思います。
- 描写力が高い。一般的に単焦点レンズはズームレンズよりも画質が高いと言われています(ただ最近のズームレンズは画質が高く、一概に単焦点レンズの方がいい、とは言えないとも言われています)。
EF-M レンズですと、まずのお薦めはEF-M 22mm F2 STM、23,870円です。F2と明るく、35mmフィルム換算35mmと若干広角のレンズとなります。性能を考えるとコストパフォーマンスに優れていると思います。続いてEF-M 32mm F1.4 STM、F1.4という明るさがとても魅力的です。また35mm換算51mmと標準レンズの焦点距離となります。ただし59,240円と値が張りますので、まずはEF-M 22mmを試してみるのがよいと思います。
私は EF-M 22mm F2 STM を使用中です。
広角レンズ
15-200mm程度の焦点距離で写真に慣れてきたら、試したいのが広角レンズです。15mmもそれなりに広角ではあるのですが、風景撮影や室内の撮影などで、もっと広い範囲が撮れれば、と思うことがあるかと思います。こういう時に便利なのが、この広角レンズです。わたしは風景、旅行で宿泊した部屋、寝台特急の室内撮影、などに使うことが多いです。
EF-M レンズですと、EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM というよいレンズがあります。39,030円で、性能を考えるとコストパフォーマンスに優れていると思います。また望遠側は22mmまでありますので、標準ズーム的な使い方もできます。EF-M 15-45mmと重複する焦点域についてはEF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMの方が画質は良いと思います。
私はこの EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM を使用中です。
マクロレンズ
花などの植物、昆虫、小物などを大きく撮ろうとしたときに、マクロレンズが必要となります。このレンズの特徴は、被写体に近づいて大きく撮影できることです。
マクロレンズの場合、焦点距離の違いは、「どこまで近づくと最大で撮れるか」ということにつながります。これより近づくとピントが合いません。この「どこまで近づけるか」を示す仕様が「最短撮影距離」になります。この最短撮影距離ですが、撮影対象とカメラに内蔵される撮像素子(CMOSセンサ)の最短距離を示すものであり、撮影対象とレンズ先端の最短距離を示すものではありません(こちらはワーキングディスタンスと言います)。ご注意ください。
EF-M レンズですと、EF-M 28mm F3.5 マクロ IS STM、36,530円です。このレンズは通常の状態で、最大で(最も近づいて)撮影した場合に撮像素子(CMOSセンサ)上に実物と同じ大きさで対象物が写ります。EOS Kiss M の撮像素子は22.3×14.9mmですから、これよりも大きなものははみ出してしまうくらいに、大きく撮ることができます。また最短撮影距離は0.097mです。なおこのレンズはスーパーマクロというモードがあり、これを使うと最短撮影距離0.093mまで近づき、より拡大して撮影することが可能です。
私は EF-M のマクロレンズは持っておらず、一眼レフ用の EF-S 60mm F2.8 マクロ USM などをマウントアダプタ経由で使用しています(下の写真)。
その他、雑記
電池のもちが悪いです。エコモード切では200枚撮影できていないようです。あるときは使い方が悪かったのか150枚でした。これは大きなデメリットであると思います。最低でも1個は予備電池を購入されることをお勧めします。わたしはいわゆる互換バッテリー(ロワジャパンのLP-E12互換バッテリー)を2個追加購入しました。
EOS 60Dでは予備電池は持っていません(必要ありませんでした)。
設定のカスタマイズ
EOS Kiss Mは、設定をカスタマイズすることでより使いやすくなると思います。下記に私が現状設定している内容を記載します。
- 記録画質:RAW側設定時はC-RAW
- C-RAWはRAWと比較するとファイルサイズが小さく、画質も見た目問題無いので、C-RAWを使っています。
- 撮影画像の確認時間:切
- 撮影画像が撮影後に出てくると便利ではありますが、操作できなくなる時間が生じたりして操作性に影響します。ここは切にして、必要に応じて再生ボタンで確認します。
- レンズ光学補正:周辺光量補正、歪曲収差補正、デジタルレンズオプティマイザ全てON
- できる画像補正はカメラにやってもらいます。
- 静止画ISO感度に関する設定:ISOオート上限12800
- 25600まで設定できますが、画質を考えて12800に留めます。
- 高輝度側・階調優先:D+、もしくはOFF
- D+で試行中です。白トビを起きづらくする設定です。
- ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)
- とりあえず、ホワイトバランスは白は白になることを優先し、これに設定。必要に応じて変更します。
- 高感度時のノイズ低減:弱め
- 標準でもよいと思いますが、とりあえず弱めにして使っています。
- タッチ&ドラッグAF設定:タッチ&ドラッグAF する、位置指定方法 相対位置、タッチ領域 右
- タッチ&ドラッグAF設定は欠かせません。個人的には相対位置で領域右が使いやすいです。なお右目でファインダーを覗くようにしていますので液晶右側が空くためこの設定となります。
- AF方式:1点AF
- 個人的には1点AFが使いやすいですが、顔+追尾優先AFも使います。
- AFフレームサイズ:小
- 1点AF指定時に指定できます。小にしています。
- 瞳AF:する
- 顔+追尾優先AF指定時に指定できます。せっかくの機能なので有効します。
- コンティニュアスAF:しない
- シャッターを押していないときには、AFが働かないようにします。できるだけ電池は節約します。
- レンズの電子式手動フォーカス:ON
- この設定により、EF-Mレンズでは、ピントを合わせたあとにピントリングを回すことでピントの微調整ができるようになります。一眼レフのレンズではフルタイムマニュアルフォーカスと呼ばれている機能です。
- AF補助光の投光:OFF
- 暗いところでピントを合わせようとしたときに、不用意にAF補助光が出ないようにします。
- MFピーキング設定:ピーキング 入、レベル 強、色 レッド
- MF時に、ピントの合ったところを分かりやすく表示させます。
- エコモード:入
- できるだけ電池は節約します。
- 節電:各項目 1分
- できるだけ電池は節約します。
- 撮影画像表示設定:省電力優先
- できるだけ電池は節約します。風景写真を撮る分にはこちらの設定で問題ありません。動体を撮る場合にはなめらかさ優先の方がよいと思います。
- カスタム機能(C.Fn)ISO感度拡張:する
- ISO51200まで設定できるようになります。
- カスタム機能(C.Fn)セイフティシフト:する
- AvやTvで絞りやシャッター値を設定している場合でも適切な自動露出が得られない場合に、カメラ側が設定値を変更することで適切な露出を得ます。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ シャッターボタン半押し:測光開始、もしくは測光・AF開始
- 測光・AF開始は普通の設定。測光開始にするとAEロックボタンのカスタマイズと合わせていわゆる親指になります。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ 露出補正ボタン:ISO
- M-Fnと入れ替えて、試行中です。露出補正ボタンはファインダー撮影時は押しづらいためです。液晶パネルでも設定できますが、とりあえずはボタンに割り当てています。液晶パネルから選択したときには無いのですが、ボタンからISO切換をするとINFOボタンでAUTOに切り替えることができ便利です。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ AEロックボタン:測光・AF開始
- いわゆる親指AF用の設定です。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ M-Fn:露出補正
- 露出補正ボタンと入れ替えています。M-Fnはファインダー撮影時にも押しやすいため、デフォルトのISOから、より使用頻度の高い露出補正に変更しています。個人的には最重要の設定内容であると感じています。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ ストロボボタン:AF方式
- ストロボは使わないので、とりあえずAF方式にしています。これにより、ストロボボタンを押すと、1点AFと顔+追尾優先AFが選択できます。
- カスタム機能(C.Fn)操作ボタンカスタマイズ 消去ボタン:ワンタッチ記録画質切換(ホールド)
- このボタンを押すと、予め指定した画質設定に一時的に切り替わります。再度ボタンを押すか、電源が切れると元の画質に戻ります。いつもはRAWだがメモ用にJPEGだけでよい、ときに使えそうです。