Canon EF 135mm F2L USM 購入まで

Canon EF 135mm F2L USM を購入した。

わたしは望遠ズームとして EF 70-200mm F4L IS USM を保有している。この焦点域を持つ望遠ズームレンズとしては軽量コンパクトで、さらに IS つきで非常に使いやすいのが特徴だ。ただコンパクトさは F4 という明るさで実現されているもので、明るさやこれに伴うボケの大きさは大口径の EF 70-200mm F2.8L IS USM ほどでは無い。明るさは欲しいところではあるが、しかし大口径望遠ズームレンズを手持ちで使い続けるだけの腕力も無い。買い換えならともかく、買い増しでは価格も問題だ。

という訳で、明るさを補う中望遠〜望遠単焦点レンズを探すことにした。とは言うものの実際のところ F4 を超える明るさが必須な事態になったことはさほど無く、画質で優れると言われる明るい単焦点レンズを使ってみたい、というのが本心で、それに理由を後付けしているようにも思う。

用途は、せっかくの明るいレンズだが屋内での使用は考えていない。屋外での花などの撮影と、人物撮影だ。

中望遠〜望遠単焦点レンズは、マクロレンズを除けば焦点距離により次のような選択肢がある。比較のため、大口径ズームレンズも併記してみた。

中望遠〜望遠単焦/望遠ズームレンズ
メーカ名称焦点距離換算実売価格重量APS-C
CanonEF 85mm F1.8 USM13643,810425
SIGMA85mm F1.4 DG HSM136118,0001140
TAMRONSP 85mm F1.8 Di VC USD13684,880700
CanonEF 100mm F2 USM16051,640460
CanonEF 135mm F2L USM21698,550750
SIGMA135mm F1.8 DG HSM216-1130
CanonEF200mm F2.8L II USM32088,630765
CanonEF 70-200mm F2.8L IS II USM112-320222,8601490

焦点距離の 85mm、100mm、135mm、200mm から何を選ぶか、という話だろう。

これまでのところ保有している単焦点レンズで最も焦点距離が長いものは、マクロレンズだが EF-S 60mm Macro USM だ。85mm ではちょっとこれに近いような気がすることと、TAMRON 90mm マクロと決めかねているので、後に回すことにした。そうすると 100mm, 135mm, 200mm が残るが、85mm もしくは 90mm をいつかは購入するとすれば 100mm はちょっとこれに近い。残るは 135mm F2 と 200mm F2.8 だが、ここは1段明るい 135mm F2 とした。この EF 135mm F2L USM はエクステンダーを使うことができる。1.4X のエクステンダーを使えば 189mm F2.8(APS-C で使えば 302mm F2.8 相当) となり、これもおもしろそうだ。かつ 1.4X のエクステンダーは EF 70-200mm F4L IS USM にも使うことができてお得だ。2X も使うことはできるが、元が F4 では Kiss Digital X や 60D では AF が使えなくなってしまう。ということで135mm F2 を購入することにした。ただこの理由は後付けのような気もする。単純に高画質と言われるこのレンズを使ってみたかった、というのが正直なところかもしれない。

Canon EF 135mm F2L USM 使用感

トンボ
135mm, Av=5.6, Tv=1/400, ISO=400, Kiss Digital X
リンク先は等倍・高圧縮

レンズを装着した見た目の大きさは EF-S 17-55mm F2.8 IS USM に似ている(実際はこれよりも100g重い)。重さは EF 70-200mm F4L IS USM とほぼ同じ。最近は 700g 前後のレンズを使うことが多いので、重くはあるが気になるほどでもない。

フォーカスリングは幅広で使いやすい。とは言っても EOS Kiss はファインダーが見づらいのでそのフォーカスリングを使いこなせないのだが、F2.8 対応の AF 用センサーを持っているのでそれを活かしてとりあえずは AF で使用している。60D でもマニュアルでピントを合わせるような使い方はほとんどしていない。

AFは速く、気持ちよく使える。このレンズはAF時フォーカスリングが回らず、かつフルタイムマニュアルフォーカスが可能だ。もちろんフォーカス時にフィルタ枠が回るということも無い。初めての単焦点Lレンズであったが、さすがに操作性は良い。

ただ EF 70-200mm F4L IS USM を多く使用していたこともあり、この焦点域で手ぶれ補正が無いとファインダー像がブレてちょっと辛い。便利な機能に慣れすぎてしまうのも困りものか。それともう1点、このレンズは円形絞りでは無いようだ。今のところは気にならないが、ボケの形状が気になることが今後あるかもしれない。

このレンズは APS-C の EOS Kiss や 60D で使用すると 216mm の焦点距離となる。これをどう使いこなすかが問われることになる。そこそこ長い間使っているが、今でもこの使いこなしには悩んでいるところがある。

画質

ハス
135mm, Av=2.2, Tv=1/1000, ISO=200, Kiss Digital
リンク先は等倍・高圧縮

APS-C サイズである Kiss Digital X でトンボを撮影してみたのが上の写真だ。最短撮影距離ではないが、かなり近づいての撮影だ。ピントの合っているところは極めてシャープだということが分かる。ボケも美しいと思われる。正直このシャープさには驚いた。このレンズはマクロレンズでは無いが、近距離での撮影にも非常に強い。最短撮影距離は90cm、最大撮影倍率は0.19倍だ。

この EF 135mm F2L USM は、単焦点望遠レンズ1本で撮影できる自信は無いので、望遠ズームレンズと併用するつもりだ。併用する候補としては保有している2本の望遠ズームレンズ、EF 70-200mm F4L IS USM と EF 70-300mm F4.5-5.6 DO IS USM が考えられる。70-300mm DO は見た目の割には重いが全長が短く携帯性に優れ、かつ効きのいい IS もあって 300mm 端でも使いやすい。ただし暗いレンズであり、かつ最短撮影距離で300mm端で撮影すると画質が低下してしまうという弱点を持つ。厳密な比較では無いが、この両者を比較してみた。

EF 135mm F2L USM はこちら。135mm, Av=3.2, Tv=1/4000, ISO=200 、屋外撮影に持ち出しての最初の1枚だ。比較的近い場所で EF 70-300mm DO で撮影したのが、こちらの写真だ。160mm, Av=8.0, Tv=500, ISO=200 の設定だ。絞っているのは、このレンズは絞らないと画質が低下するためだ。蜘蛛の巣があったり、花菖蒲に穴が開いていたりするのはとりあえずは無視していただきたい。

70-300mm DO は場合によっては絞っても滲みが見えたりするのだが、今回は 160mm だからかそういう問題は無く、わたしから見れば問題の無い写りだ。ただ絞っているため、背景がうるさい。これに対して EF 135mm F2 USM では F3.2 と比較的絞りを開けている(とは言っても1段以上絞っているが)にも関わらずシャープだ。ボケ方もきれいだ。開けていてもこれだけシャープに写るのだからすごい。

ヒガンバナ
135mm, Av=2.0, Tv=1/800, ISO=400, Kiss Digital X
リンク先は等倍・高圧縮

画質が高いのは分かったが、画質の高いLズームである EF 70-200mm F4L IS USM と比較するとどうだろうか。遠くの建物で簡単に取り比べてみた段階では、F4 ではさすがに EF 135mm F2L USM の方が多少は良いように見えるが、写真だけ見せられてどちらがどのレンズで撮影したものかを問われれば、分からないかもしれない。そしてここから1-2段絞ってしまえば、恐らくわたしの目には差は分からなくなるだろう。それだけ EF 70-200mm F4L IS USM の画質が優れているといえる。

そのように考えると、この EF 135mm F2L USM の価値はどこにあるのかと言えば、やはり明るさとそれに伴うボケ具合なのだと思う。F2.0 でもシャープなので、開放からこれを活かして安心して使うことができる。しかしながら絞りを開けるとピント合わせはシビアになり、ピントがずれてしまえばシャープなレンズを使っていても意味が無い。デジタル写真では画像の拡大も容易で、さらにピントのずれが目立つ。明るいレンズでボケを活かすには、正しくピントを合わせるという基本的なところがカギになるようだ。